千住 博(せんじゅひろし)の『絵の心』

  日本文化は世界の中でどのような位置を占めることができるのか?人類にどのような価値を提供することができるのか?千住はそのような問いに対して真っ正面から取り組み、われわれにひとつの道を指し示したと思う。
  千住は1995年『ザ・フォール』という滝をテーマにした作品で、東洋人として史上初となるヴェネツィア・ビエンナーレでの優秀賞を受賞している。また大徳寺聚光院(じゅこういん)別院の80メートルにもおよぶ襖絵でも有名である。
  彼の画文集『絵の心』(世界文化社)は彼のこれまでの作品を集大成し、それに彼自身が解説を付けたものである。その精神の軌跡をたどる上で貴重な資料となっている。
…「アートとは『あらゆるものを越えてゆく』そして『皆のものである』ことが条件だ」「二つの条件をあわせて言うなら『美は神の領域』ということか。」「日本の美を探るなかで日本人が感じてきた普遍性のなかに、今の世界が忘れている何かがあるかもしれない。それを示すことこそ、真のインターナショナル、真の国際貢献ではないだろうか。日本文化を通して、人類の真理に迫るーそれが日本美を探る意味ではないだろうか。」…
  彼の作品を前にするとき、その美に対する真剣さに背筋を正され、敬虔な気持ちがわき上がる。特に「ウォーターフォール」は必見である。

千住 博『絵の心』(世界文化社)
by ykenko1 | 2004-11-23 21:47 | 芸術 | Comments(2)
Commented by Hiroette at 2004-11-24 23:36 x
こんにちは
ご無沙汰しております。

私も日本橋三越での千住博展で初めて生の作品を見ました。
本当に素晴らしいですね。

何か時間の流れというのに言及していたように思います。そういうのを絵の中に閉じ込めたいのかな、とも感じました。
Commented by ykenko1 at 2004-11-26 17:28
Hiroetteさん、こんにちは。お久しぶりです。コメントバック遅くなってしまい済みません。
生の作品は私も見たことがないので、うらやましいですね。
千住氏は過去・現在・未来をいかにむすぶか、という問題意識をもっておられるようですね。そういう意味で伝統を重んじながらいかに新しい作品を作っていくか、というスタンス(あるいはモダンを肯定しつつ、それを越えて行く)のようです。
私は千住氏を美術界のイチロー選手のように、世界に日本の素晴らしさを伝えてくれる芸術家として期待しているんです。


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