複雑系の認識論(3);冷たい認知と温かい認知

  富山医科薬科大学の小野武年(たけとし)先生のお話を聞く機会があった。小野先生によれば人間の心を知・情・意に分けるとすれば、昔の脳科学では大脳皮質を中心とした知をもっとも人間の脳の機能のなかで上位において研究が進められていた。しかし近年では大脳皮質を中心とした知と大脳辺縁系を中心とした情のバランスが重要であるという認識に立って研究が進められているという。その場合の大脳皮質を中心とした認知を冷たい認知、辺縁系を中心とした認知を温かい認知と呼んで、温かい認知は情動による認知でそれが価値判断と関係している。IQとEQのバランス。
  このような脳科学の研究の方向性の変化にも社会全体の人間観の変化が微妙に影響しているようだ。昔は科学万能主義で知の優位性が唱えられていたが、今は知がいくら進歩したとしても世の中はよくならない。むしろ悪影響を及ぼす(環境破壊・核兵器・生物化学兵器・コンピュータ犯罪・人間性の歪み、その他)ことが目立つようになり、むしろ人間の情動の問題が重要視されつつある。
  脳科学の進歩が人間社会をより良いものにするのに貢献してほしいものだ。
by ykenko1 | 2004-12-06 11:43 | 認識論 | Comments(5)
Commented by eda at 2004-12-08 00:49 x
情も知の一部かと思っていたんですが、脳の部位も違ったんですね。情の存在意義を考えちゃいます。ところで意は?
Commented by ykenko1 at 2004-12-08 01:13
意は前頭葉ですね。意と一口に言っても、いわゆる意欲や思考、計画、柔軟性、目的を遂行するために欲望を抑制する働き、などいろいろ担っているのが前頭葉です。脳の後ろの方が知、内側面が情、前の方が意、という感じになっています。
Commented by halfmoon81 at 2004-12-13 12:42
初めまして。以前は研究所勤務でしたが、今は海外で子育て中です。子供を実験台(?)にしてバイリンガル教育を実践してきましたが、言語(知)を本当に理解するには、その国の文化(情)を肌で感じていないと無理ではないかな、と思っています。まさに、IQとEQのバランスですね。 最近は、前頭葉が未発達な子供(キレやすい)が増えてきているとか、これは何が原因なのでしょうか。 
Commented by ykenko1 at 2004-12-13 15:49
halfmoon81さんはロンドン生活ですか、いいですね。
お子さんのバイリンガル教育はうまくいっていますか?というのは『早期教育と脳』という本(以前私の記事でとりあげました)にはあまり早期のバイリンガル教育(たとえば0歳から)は難しい部分がある(言葉がちゃんぽんになってしまう)とあったものですから少し気になります。
ところでキレやすい子供が増えてきたことですが、これについては環境ホルモンの影響だとする方もいるようですが、私はそれよりもむしろ社会環境の影響が強いと考えています。小さい頃から甘やかされて育ってきたためではないか、と。愛情としつけのバランスということになると思います。
Commented by halfmoon81 at 2004-12-14 02:31
愛情としつけのバランス、確かにそうですね。以前は、けじめというものがありましたが、今はあやふやですもの。
ところで、早期からのバイリンガル教育の問題点はご指摘の通りで、両言語がアベレージ以下(どちらの言語もきちんと話せない)になってしまう危険性があるので、5歳まではひとつの言語を普通(ネイティブ並み)に話せるようにした方が、後からの学習がきちんとできるのは確かです。9歳ぐらいまでに、母国語としての認識が確立されるそうですので、それからは あまり神経質にならなくても、と思っています。今は、中学生なので どうやって日本語の語彙を増やしたらよいのか 模索中です。やはり 読書しかないのかな、とも思います。


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