iPad;『マーカス・チャウンの太陽系』の衝撃

 iPadで『マーカス・チャウンの太陽系』をダウンロードしていじってみて衝撃的体験をした。
 内容は太陽系についての科学的な知識を伝える一種の教科書的なものなのだけれど、そのインタラクティブ性によりとても興味深く、高度な内容が一瞬にして心に定着するのだ。15分ぐらいの間に今まで専門外にてよく知らなかった短周期彗星、長周期彗星、カイパーベルト、オールトの雲の話、なぜ冥王星が惑星から準惑星に降格したか、岩石の惑星とガス惑星、などの内容が本当によく理解できた。腑に落ちた、と言うか。おそらく今後もこの知識は簡単には忘れないと思う。
 この電子書籍がよくできている点は、網羅的ではなくて興味深いストーリーによって全体を貫いている点だ。そのため様々な知識が自然と吸収できる。
 ヴィジュアルな本も分かり易いが、インタラクティブな電子書籍は分かり易い上に操作そのものが面白いため、入り込み易い。インタラクティブであると言うことは、ある対象に対してこちらが操作を加えた時にどのような振る舞いをするかを計算して返してくるということ。空間の3次元のみならず、時間(運動)の要素も含めた対象の4次元の振る舞いが表現されているということ。自分の興味の内容に導かれて行きつ戻りつしながら、より対象の様々な部分や奥深くまで入り込んでいけるということ。
 この書籍の中でのインタラクティブの代表例は太陽系儀だ。すなわち水星がこれぐらいのところを回っている時に、金星はこれぐらいのところをこれぐらいの速さで動いていて、地球は…、と言った太陽系の星々の動きをシュミレーションしているもの。昔は銅製の太陽系儀があって、それによってそれぞれの惑星の動きをプレゼンテーションしていた。
 
 今後、教科書はこういうものが多くなるのだろう。そうすると子供達は抽象的な数学や高度な知識もこれまでの何倍も速いスピードで吸収していくことになるのだろう。恐ろしいような素晴らしいような未来を垣間見た気がした。
by ykenko1 | 2012-03-03 18:38 | その他 | Comments(2)
Commented by 糸川洋 at 2012-03-04 07:59 x
『マーカス・チャウンの太陽系』を翻訳した糸川です。すばらしいレビューを掲載していただき、ありがとうございます。まさに著者、制作会社が目指していたところをご理解いただけたことを嬉しく思います。

4月21日にオライリージャパンから書籍版の『マーカス・チャウンの太陽系図鑑』が出版されます。大型判の書籍だと写真もきれいだし、大陸移動説や土星の環の粒子が凝集する様子のシミュレーションなど、iPadアプリでは動的に提示していたものが静的な段階を追って解説されているなど、紙の書籍ならではの良さがあります。以下に図鑑の特設サイトがありますので、よろしかったらご覧ください。
http://www.oreilly.co.jp/special/solarsystem/index.html
Commented by ykenko1 at 2012-03-04 08:23
翻訳者の糸川様からの直々のコメント大変ありがとうございます。この電子書籍に関しては本当に絶賛したいと思い、ブログの記事を書きました。著者、翻訳者の方々の数多くのご苦労があったかと思いますが、素晴らしい業績を達成されたことお喜び申し上げます。今後、このような電子書籍が様々な分野で作られることが私の希望です。


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