階層・次元の問題(3)

  現在、世界保健機構(WHO)では人間の健康の定義として「身体的・心理的・社会的・霊的(スピリチャル)に健全な状態」としています。また精神医学の世界では人間理解の多次元モデルとして「生物・心理・社会・実存」という幾つかの次元に渡って人間を理解することが常識になっています。
  私は究極の複雑系は人間だと考えています。そして私自身の複雑系に関する最大の関心は人間を如何に理解できるか、ということでもあります。
  その人間自体がいくつかの次元に渡って存在しているとすればその関係がどうなっているのかもっと解明され、整理されなければならないと思うのですが、そういう問題が置き去りにされている。たとえば生物的な次元でとらえる人々はそのレベルでしか人間をとらえられない、心理的次元でとらえる人々は心理的次元でしかとらえられない、以下同様…という具合です。もっと統合的に人間をとらえることはできないのか、あるいはまだそういう時期まできていないのか。
  私自身の専門(というか、かじっている程度ですが)は「脳と心の関係」なのですが、この分野でもこの次元の問題がおろそかにされていることがあると強く感じています。
  さて、階層・次元の問題は今回で終わりにして、次回からは次に進みたいと思います。
by ykenko1 | 2004-04-15 23:56 | 科学など | Comments(6)
Commented by 98765421 at 2004-04-18 00:57
WHOでは公的に霊的な存在を認めているのですね。
精神医学の分野において、その様に多岐な次元での理解が常識となっているのも、素晴らしいと思います。
究極の複雑系が人間という考え方には、共感します。

生物を対象としている研究者において、研究対象のストレス応答は考えても、人間に対しては、ストレスと健康の関係を考えていない人が多いです。
もっと、心と体のつながりをしっかりとみんなが認識し、人を使う立場の人間は必須の知識として持っておいて欲しいです。
Commented by ykenko1 at 2004-04-18 17:47
WHOのspiritual healthというのはキリスト教を背景にしていて日本語では宗教的健康とでも翻訳したらよいかもしれません。霊的な存在を認めるというよりも人間の精神のより深い部分の健康を問題にしている、というのが正確だとは思います。
Commented by 98765421 at 2004-04-20 14:16
なるほど、そちらなら納得です。
勝手に勘違いしてしまい、すみません。
Commented by ykenko1 at 2004-04-20 19:23 x
ただ、やはり日本は欧米諸国に比べると宗教性が欠如した国だとは思います。(日本の宗教は武士道なのだという人もいますが。)
Commented by prigogine at 2004-04-30 21:39
ちょっとトラックバックしました。

日本が無宗教になるのは宗教法人が詐欺と脱税の温床
だからでしょう。
Commented by 201V1 at 2004-05-12 22:39
うっ。見解が違う。小生はこの国はハレとケとタタリズムとウブスナガミ信仰の国と思っていた。(悩
Commented by ykenko1 at 2004-05-13 10:04
宗教性が何かという定義の問題ですよね。201V1さんのいう意味では確かにその通りだと私も思います。いずれにせよ、日本人がいかにグローバルな観点を取り入れられるのか、あるいはグローバルな観点から自分の文化をとらえなおすことができるのか、というのは課題だとは思います.


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