がんばれ!日本人研究者(1);稲垣耕作

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  アテネ・オリンピックの応援団のようなタイトルですが、同じ日本人としてやはり複雑系の分野でも我が国の研究者にがんばってほしい訳です。それで今回から私が注目する日本人研究者を何人か紹介してエールを送ってみたいと思います。第1回目は京大の情報学研究科助教授の稲垣耕作氏です(稲垣耕作のホームページ)。
  砂山の上から砂を少しづつ落としていったときに雪崩がおきます。そのときに雪崩の規模と頻度を両対数グラフにプロットすると右肩下がりの直線上に配置されます。このように両対数グラフ上で直線上に分布する現象を「ベキ乗則」といいます。(参照;ベキ法則って?)このような現象は地震の大きさと頻度や人口の多さと人口の多さの順位とかぎざぎざの海岸線のフラクタル図形などでなりたつと言われています。稲垣氏は最先端の画像認識ソフトを作成してそのソフトによって新聞紙面を認識させる中で「超指数法則」を発見しました。それは人間が認識するデータは「平方根が階層的に積み重なった数値法則」に従っている可能性があるというものです。実際のデータでは画像を構成する点の数の平方根が画像認識の基本とする要素数に近く、その要素数の平方根が画像の中で写真や見出しなどのまとまりのある単位の数になり、そしてその単位数の平方根程度が記事の数になるという階層性があるとのことです(図を参照)。この研究は『パターン・レコグニッション』という国際学術誌で1984年のベスト・ペーパーの一つに選ばれました。
  彼は超指数法則の先に生命現象に伴う「計算万能性」という概念を発見します。計算万能性というのはコンピュータと同じ計算能力をもっているという数学的性質のことで生命現象にそのような情報処理のメカニズムが付随しているというのです。そして彼は以前紹介したウルフラムのセル・オートマトンやカウフマン・ネットワークにおいて計算万能性の条件がなければ創発現象が起こらないことを証明しています(創発現象とはいくつかの因子が相互作用していく中でこれまで無かった新しい次元の性質が生み出される現象のこと)。
  さらに彼は情報物理学という新しい学問を提唱しています。彼の予想では素粒子レベルのある種の性質が生命体を構成する物質分子に計算万能性を発現させているはずで素粒子レベルにおいて情報と物質の両法則の接点が解明される可能性があるとしています。そして素粒子レベルにおいてすでにそういう性質を伴っているとすればこの宇宙は生命と知能を生み出す必然性をもって誕生したのかもしれないと指摘しています。
  今後、世界的に注目される科学者の一人だと確信しています。

参考書;『複雑系を超えて』筑摩書房
by ykenko1 | 2004-06-06 20:56 | 日本人研究者 | Comments(3)
Commented by it1127 at 2004-06-07 02:02 x
ykenko1さん、おはようございます
>超指数法則とか計算万能性とか
まだ理解できていませんが、興味深いです。ホントこの世界って面白いですね。それから、蛇足ですが、トラックバックしていただければありがたいのですが。
Commented by ykenko1 at 2004-06-07 10:15
it1127さん。コメントありがとうございます。私も超指数法則とか計算万能性とか言葉しか分からないのですが、稲垣氏の研究はどうやら凄そうだというのは分かります。
Commented by it1127 at 2004-06-07 15:52 x
ykenko1さん、こんにちわ。トラバありがとうございます。
深遠かつ魅力的なテーマなので、ゆっくり勉強して行こうと思っています


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