グレッグ・イーガン 『万物理論』

グレッグ・イーガンのSF小説『万物理論』を読んだ。先々週と先週の学会の間の開いた時間を使って読んだのだけれど、そんな時でもなければなかなかまとまった時間が取れない。

どんな話かと言うと、ほど遠くない未来(2050年代)が舞台。太平洋上のある島で国際物理学会が開催される。そこで3人の理論物理学者がそれぞれ万物理論(TOE;Theory of Everythings)を発表することとなった。ひょんなことからその内のひとりの学者を取材することになったジャーナリストがとんでもない事件に巻き込まれつつ、宇宙の真実の姿に触れて予想もつかないラストへと雪崩れ込んで行く。

SFの場合、好き嫌いがはっきり分かれるのだろうが、普通の小説が舞台の上の登場人物についての作り話を描いているとすれば、SFの場合は登場人物のみならず舞台そのものまで作り上げる訳で、作者はひとつの宇宙の創造主のような感覚を抱いているのだと思う。

この小説の中に自発的自閉症者協会というのが出てきて、人間の愛情に関する認知は単なる幻想に過ぎないと言って自ら大脳皮質のその部分(小説の中ではラマント墅という特殊な部分がそれを担っていることが21世紀初頭に発見されることになっている)を破壊することを求める人々がいる。彼らの人間性に対する批判が強烈だ。

イーガンの作り出す世界はリアルでシニカルで多くの問題提起をしてくれる点が刺激的だ。
by ykenko1 | 2006-09-26 06:55 | エンターテイメント | Comments(0)


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