カテゴリ:医学・医療( 12 )

精神医学の教科書

最近の精神医学の教科書としてお勧めの二冊。

1. Advanced Psychiatry―脳と心の精神医学(著者)武田 雅俊、 加藤 敏、 神庭 重信(金芳堂)

 最近の神経生物学的知見を盛り込んだ日本語の教科書。統合失調症、不安性障害、気分障害の3つの疾患を中心に歴史的な概念の変遷もコンパクトにまとめられている。文献も豊富で実用的。

2. Neuropsychiatry and Behavioral Neuroscience 2nd.Rev.Ed.(著者)Jeffrey L. Cummings, Michael S., M.D. Mega(Oxford University Press)

 有名なカミングスと画像の研究者メガの共著。高度な内容だが高校の受験参考書のように重要事項を色付きの枠で囲ってあったりするのがuser friendly。ヴィジュアルも奇麗で分かりやすい。1万5千円と高いのが難点。


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by ykenko1 | 2008-10-28 23:27 | 医学・医療 | Comments(2)

脳ー身体ー環境回路とリハビリ

たまたまリハビリ関係の研究会に参加したのだが、リハに関するものに参加するのは初めてだった。これまでは高次機能障害や認知症や臨床心理の学会にのみ参加していた。と言う訳でとても新鮮だったし、勉強になった。その中でとても強い印象を受けた事があって、多分この内容はリハビリ関係をやっている人にとってはとても当たり前の現象なのだろう(例えば気まぐれさんなんかはとてもよく知っている事なのだろうけれど)が。

それは脳ー身体ー環境がひとつの回路としてつながっているということだ。そしてそこにおいて治癒的変化がもたらされるということ。

一番印象に残った症例は寝たきりのお婆ちゃんの話で、脳梗塞後遺症で身体全身が過緊張の状態になっている。車いすに乗せる事もあるのだが、その上でもやはり突っ張ってしまっている。コミュニケーションもほとんどとれずに「痛い」ぐらいしか言わない。その方に対してバスタオルを身体の下に敷いて体位交換するようにしながら背中の様々な部分がベッドに触れる感覚を与えていくことで身体の過緊張の状態が改善し、車いすでの姿勢が改善。首も回すようになってアイコンタクトも取れるようになり、「痛い」という発言もなくなってしまった。何故こんなことが可能なのか?

その理学療法士の考察では脳梗塞の後遺症で体幹を保持する力が無くなってしまいベッド上でも姿勢を保つ事ができず、それを代償しようとして過緊張の状態になっており、背中からの感覚入力も歪んでしまっている。バスタオルを利用して背中の部分、部分の感覚入力を与えてやる事で自らの姿勢に関する認識に変化がもたらされて過緊張の状態が取れてリラックスできたのだと言う。

この症例以外にも車いすとポータブルトイレの下にクッションを一枚追加しただけで日常生活動作(ADL)が大きく変化し生活の自立度と意欲の変化が見られたり、半側空間無視といって頭頂葉の障害で身体の左側に関して注意が行かなくなっていた人がプリズムめがねで視線を左に10度ずらすことで左側への注意がなされるように脳の回路が切り替わったり、などが印象的だった。

これらの症例から感じたことが脳ー身体ー環境の回路がひとつにつながっており、ひとつを変化させることで全体に変化がもたらされるということであった。それはヴァレラとトンプソンの“Radical embodiment”の中で「脳だけの世界」から「脳ー身体ー環境の世界」へ観点を変えなければならないと主張した事、そのものであった。抽象的に考えると脳ー身体ー環境がひとつになってあるアトラクタを描いていたのが、リハビリ的介入により別のアトラクタを描くようになったと見る事ができようか。ある種の感動を覚えた。

あまり触れてこなかった分野から学ぶ事はとても大きい事を実感した次第。

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by ykenko1 | 2007-11-18 06:59 | 医学・医療 | Comments(4)

ノ、ノロウィルスが…

私の病院でもノ、ノロウィルスが…。た、大変だ…。早く収まってほしい。
by ykenko1 | 2006-12-26 18:08 | 医学・医療 | Comments(4)

変わった言葉の障害

脳に障害を負った方で変わった言葉の障害を表現することがある。

反響言語 echolalia;相手から言われた言葉をそのまま繰り返して言ってしまう。
同語反復 palilalia;自分の話した言葉を繰り返して言う。
滞続言語 stehendes Reden(レコード言語 gramophone speech);ある程度まとまった文章を繰り返し言う。
語間代 logoclonia;単語の終わりの音節を繰り返して言う。(ex おはようございますますますます…)
吃音 stuttering;単語の始めの音を繰り返して言う。(いわゆるどもるということ)
by ykenko1 | 2006-10-21 09:57 | 医学・医療 | Comments(0)

高齢者用MRI

仕事柄、80代から時には90代の方に頭のMRIを撮る機会が多い。しかし、その時にときどき困るのが背中の曲がった高齢者。MRIを撮る時には頭を固定してコイルという枠の中に収まるようにするのだけれど、背中が曲がっていると入らない。是非、東芝でもGEでもSiemensさんでもどこでも良いので、背中の曲がった高齢者の方でも撮れるMRIを作ってください!
by ykenko1 | 2006-10-13 12:12 | 医学・医療 | Comments(0)

doctor as a medicine

doctor as a medicineという言葉がある。医師の人間性そのものが患者にとって治療効果をもたらす薬の役割を果たすということだ。自分の人間性や人格がとうていそういう境地までは至っていないのだけれど、それを意識して診療にあたっている。ただ病院ではdoctorだけではなくて、看護師 as a demicine、リハスタッフ as a medicine、薬剤師 as a medicine、栄養士 as a medicine、事務員 as a medicine、入院環境 as a medicine、である。それらが全て総合して患者さんにとってのmedicineの役割をしているのは当然のこと。

高齢者の方は例え痴呆症のある方でも、医師のことを大変尊敬して下さる。自分がそういう尊敬に値するとは思わないし、偉ぶるつもりは全くないのだけれど、そういう自分の立場を治療行為として利用することはある。ちょっとした一言で患者さんの気持ちが変わったり、医師がその場にいるだけでケアしやすい状態になったりすることがある。ただ最近は医師の権威も失墜しつつあるから、20-30年もしたらそういう介入法は効かなくなるかもしれない。
by ykenko1 | 2006-09-28 12:12 | 医学・医療 | Comments(3)

神経性食思不振症

神経性食思不振症、いわゆる拒食症というやつだ。心療内科のドクターに聞いた話だが、最近の神経性食思不振症の患者は昔とは大部違うようだ。昔は女の子でスタイルが良くなりたくて食事を拒絶してガリガリに痩せてしまい、到底美しいとは言えない姿になってもまだ痩せたいと言って食事をせずに命を落とすケースも少なくなかった。最近はそこまでストイックに食べないことを貫けないようで、むしろ過食に走る。過食してその後、のどに指を突っ込んで吐く、というのを繰り返すパターンの方が増えて来たそうだ。そして男性の患者も増えていて、これがまた手に負えないと言う。時代が変われば病気も変わる。
by ykenko1 | 2006-09-20 22:15 | 医学・医療 | Comments(2)

ジェットコースターと不整脈

先日、m3.comの医療関係のニュースで知ったのだが、ジェットコースターに乗車後に4割強の人が不整脈を自覚していると言う。私の聞いた話でも40代の医師がジェットコースターに乗って突然死した。別に怖いとは思わないが、これから乗るのはやめることにしよう。
by ykenko1 | 2006-09-11 11:59 | 医学・医療 | Comments(4)

神経心理学について

神経心理学という学問の分野がある。簡単に言えば脳と心理現象の対応について調べる学問だ。元来は脳に障害を持った人の障害部位とその方の症状を付き合わせて見て、脳のこの部分はこういう機能があるのではないか、と推測するところから始まったもの。ブローカという医者が生前「tan、tan」としか言えなかった患者の脳を解剖して左の前頭葉のある部分が脳血管障害でやられていることからその部位を言語と関係があるのではないか、と言ったのが一番最初と言われている。最近は脳の画像医学、特にPETやfunctional MRIと言った、機能画像が発達して来たため、それらのツールを用いた研究が主になってきている。

ところが最近、神経内科の中では神経心理学という言葉を廃止した方が良いという人々がいる。いわゆる心理学という学問分野を低く見ていて、あんなものは科学ではない、心理学なんていう言葉を使うな、行動神経学とか認知神経学、と呼べ、と言うのである。心理学の中にも行動心理学と認知心理学がある。行動心理学は人間の心理現象はその対象となる人の言動を客観的に調べる事ですべて理解することができ、それこそが科学的なやりかたなのだという行動主義の考え方に基づいている。行動主義では内省的に自分の心を振り返るなどという方法論は科学ではないとして退ける。心なき心理学などという言われ方もする。一方、認知心理学は情報理論に基づいて心理現象を解明する手法を取っている。先程の行動神経学や認知神経学という言葉は行動心理学や認知心理学の流れを組んでいて、それと神経科学を組み合わせるというものだ。

あるノーベル賞を受賞した神経科学者は言う、「脳のことがこれだけ分かってきたのだから、心などという幼稚な言葉は廃止すべきだ。」「それは宇宙飛行士にとっての『空』という言葉のようなものだ」。つまり脳が分かれば心のすべてが分かる、と言う訳だ。神経内科の分野でも同様の考えが多くを支配しているようだ。

しかし私は心理現象の解明のために内省的方法論は欠かせないものだと思っている。たしかにそれはいわゆる科学の方法論の舞台の上にのぼりにくいものだとは思う。なぜなら定量化することができないからである。しかし内省的な方法によって知ったものは事実である事は間違いない。ある見方からすれば外側にある物質世界よりも私たちは自分の心と密接に結びつき、それを体験している。(ラディカルな神経科学の立場からすればそれはニューロンの発火現象に過ぎず、幻想にすぎない)また心理現象と脳の中の物理化学的現象には対応関係はあってもすべてを物理化学的現象に還元することは不可能だ。少なくとも私にはそう感じられる。物理化学的現象には心理現象のような深みに欠けるからだ。内省的方法論を大切にしつつ、脳と心理現象の関係を研究していくという意味で私は神経心理学という言葉を残したいと思う。

最近、モギケン(茂木健一郎)さんの2006.7.15のクオリア日記の中で以下のような言葉があり、共感した。

「最近解説を書かせていただいた
河合隼雄先生の『縦糸横糸』(新潮文庫、近刊)
の中にこんな素敵な文章があった。

  さて、その深層心理学であるが、これを創始したフロイトにしても、ユングにしても、最初は自分の心の病を治そうとして、自ら自分の心を分析して成功した(中略)つまり、学問として、できる限り一般的、体系的にまとめあげているが、最初の出発点は、ある人間が自分自身のことをよく理解しようとしてはじめたことである。(中略)深層心理学は他人のことをとやかく言うためではなく、自分を知るために、時がそれがいかに苦痛であっても、役立ててゆくためにできてきたものである。

 自分のことは棚上げして
他人のことばかりあげつらう言説がメディアの
中で目立つ昨今、河合さんの上の文章を
服用して魂の清涼剤としたい。」

モギケンさんは脳科学者だけれどもバランスが取れた人なのだと思う。
by ykenko1 | 2006-07-21 08:18 | 医学・医療 | Comments(2)

脳卒中後の治療;MMP-9

  脳卒中直後に組織障害をもたらすと考えられていたMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ-9)が脳卒中発生後7-14日の脳組織の再構築を促進することが分かった(Nature Medicine2006;12:441-445)。脳卒中の急性期後の治療に役立つ可能性がある。
by ykenko1 | 2006-06-21 00:50 | 医学・医療 | Comments(0)