カテゴリ:情報論( 19 )

情報とパターン

情報とは特異性(意味)を伝えるパターンである。

あるシステムが情報を認識するとは、パターン特異的な反応をすることである。
by ykenko1 | 2014-03-21 13:27 | 情報論 | Comments(0)

情報の3つの意味

前回、情報とパターンの関係について書いた。今回は情報の意味について、3つの観点から考えてみたい。

情報の意味は難しい問題である。情報科学の分野を切り開いたクロード・シャノンでさえ、情報の意味の問題は避けて通った程だ。しかし、それも当時(1948年)の時代の状況を考えれば、致し方なかったと思われる。その当時はまだコンピューターも現在のように普及はしておらず、脳科学もほとんど情報科学と結びついて研究されるに至っていなかったからだ。

現代においては、コンピューターが社会の隅々にまで影響を及ぼし、理論的にも技術的にも情報科学は驚くべき進歩を遂げている。また脳科学の分野でも脳機能の画像化がなされ、計算論的な脳の研究が進んでいる。今こそ、情報の意味とは何かと言うことを真正面から取り組むべき時代であろう。

私は情報の意味は(1)客観的な意味、(2)主観的な意味、(3)間主観的な意味、の3つの観点から研究されるべきだと考えている。

(1)客観的な意味は、パターンの入力(人間であれば五官からの感覚入力)に基づいて脳内にどのような変化が生じるか、そして行動上にどのような変化がもたらされるかを研究することで理解されるであろう。

(2)主観的な意味は、内省的なクオリアの問題であり、人文学の領域でもある。神経言語学者ジャッケンドフが問題提起した「心ー心問題」を考えてみよう。それは我々が自覚する意識の内容とそれを支える計算論的な脳活動の間のギャップの問題である。我々が考える時、自覚している思考の中身は直列的なプロセスであるが、脳の情報処理のプロセスは並列処理であり、そのプロセスを我々は自覚していない。思考のみならず見ると言う行為においても我々が意識するのは見る対象のみであり、それを支える網膜や視神経が賦活されるプロセスや視床を介して後頭葉の視覚野でプロセスやそれに引き続く頭頂葉や側頭葉における情報分析のプロセスなどを全く意識していない。我々は主観的な意識の内容と客観的なプロセスの対応関係を研究していくことになる。

(3)間主観的な意味とは、社会的な意味と言っても良い。例えば我々が言語を学ぶ時必ず社会的な相互作用を通してその使用法を学ぶ。視覚や聴覚が単純に環境との相互作用の中で神経系の発達がなされていくのに対して、脳同士の共鳴現象やミラーニューロンを介した相互作用、感情的な相互作用も含めて言語は学習されていく。最近ではソーシャルブレインズの研究として分野が確立されつつある。脳は他の脳とつながっていてこそ、脳本来の力が発揮できる。

ドナルド・デイビィドソン;『主観的、間主観的、客観的』

フッサールと神経科学

間主観性と現実
by ykenko1 | 2014-03-16 17:33 | 情報論 | Comments(0)

パターンと情報

これまでパターン特異的反応性(PSR)について書いてきたが、パターンと情報の関係について考えてみたい。

情報の概念は通常、人間および人間社会において用いられる。そしてミツバチ同士のコミュニケーションについて議論することがあるように、生物の世界においても情報の概念を適用することは可能であろう。しかし、情報の概念を物質世界にも適用可能かどうかは議論の分かれるところだが、最近は情報論的宇宙論も珍しくはない。

私の考えでは、情報はこの宇宙におけるPSRの一種である。人間や生物はパターンを通して周囲の世界を認識し、コミュニケートし、行動を変容させる。情報とはパターンを介して何事かが伝達される事態を表現している。そして伝達される何事かを、その情報の意味と言う。人間/生物は受け取ったパターンを自ら自体に生まれつき備わっている情報認識のシステムや経験を通して学習した内容と照らし合わせて、理解し、処理(解釈)し、蓄積し、時に行動を変容させる。情報は様々なあり方を呈するこの世界の一部分を切り取り、存在可能性の座標系の中での一点を指し示す矢印のようなものだ。つまりある種の特異性を表現している。

人間/生物は自らの内に内部世界を持ち、外部世界についての地図を持っている。そして受け取ったパターンを地図と照らし合わせて、その意味を探り、場合によっては行動を選択する。

PSRは「物質ー生物ー人間ーコンピューター」をつなぐ概念である。一方、情報の概念を物質世界に適応する場合は、物質からなるシステムがパターンを認識すると考えることになる。それが妥当であるかどうか?考え方としてはいろいろあるだろうが、最終的にはその考え方なりモデルが、どの程度実用性を持つかで選択すべきであろう。
by ykenko1 | 2014-03-16 17:23 | 情報論 | Comments(0)

パターン特異的反応性(PSR)の定式化

パターン特異的反応性(PSR)の定式化はどのようにしてなされるだろうか?

それは計算論によってなされる。計算論とはコンピューター上においてなされる計算を取り扱う数学の一分野である。離散数学と呼ばれることもある。ここにおいて注意しなければならないのは、計算と言う言葉である。コンピューター上でなされている計算はいわゆる数値の計算だけではなく、論理演算のように記号をある一定の規則に従って処理するようなものも含んでいることである。

計算論的なアプローチが記号の直列的な処理であるとすれば、記号の並列的な処理のモデルはセル・オートマトンである。(と言うかセル・オートマトンも計算論の一部分ですが。)セル・オートマトンは自己複製機械を考察するためにフォン・ノイマンによって考案されたモデルで、幾つかのセルがあって、そのセルがいくつかの状態を取ることができて、その近傍のセルの状態によって次の時間にどのように状態が変化するかについてのルールが決まっている。そのようなセルの時間的な状態変化を見ていくものである。

そしてこのような形で物質世界を理解しようとするアプローチは既に何人かの代表的な研究者たちによって切り開かれている。(MITの人たちが多い。)

・ツーゼ(Zuse,“Calculating Space”
・フレドキン(Fredkin, “Digital Mechanics”
・ウルフラム("A New Kind of Science"1200ページを越える大著;凄い人ではあるが、ちょっと考え方が偏っているのでは?)
・ロイド(Lloyd, “A theory of quantum gravity based on quantum computation”


教科書
・Schiff『セルオートマトン』(日本語なので取っ付きやすい)
・Ilachinski “Cellular Automata; A Discrete Universe”(一番総合的でバランスが取れた本)
by ykenko1 | 2014-03-01 19:32 | 情報論 | Comments(0)

パターン特異的反応性(PSR; Pattern Specific Reaction)(2)

さて、私の考えるパターンについて分かりやすく定義すると「パターンとは事物の特徴の組み合わせである」と言うことになる。ここで私が問題提起したいことは、そのようなパターンが問題になるのは、果たして多数の要素が相互作用するようなシステムにおいてだけなのであろうかと言うことである。もっとシンプルなシステムにおいてもパターンが重要な役割を果たしてはいまいか?

例えばスイッチを考えてみよう。電池があって、電球があって、銅線があって、スイッチがあるような回路である。スイッチを押す時はもちろんエネルギーが必要であるが、同じエネルギーを投入してスイッチ以外の場所を押しても、このシステムでは何も起こらない。スイッチを押した時のみ電球が点く。ここにおいて投入されたものは何であろうか?スイッチの場所と言うシステムにおける特異的な場所でのエネルギーの投入と、スイッチが入ることによって銅線がつながるというパターンの変化である。システムの関係性の変化と言っても良い。それは量の変化とは別ものである。スイッチ以外の場所で強い力で押したとしても、それに比例した変化は生じない。

別の例を挙げる。二つのボールA,Bの衝突を考えてみよう。台の上で運動する二つのビリヤードボールが衝突する場面を想像してほしい。この現象において、衝突の前後で作用反作用の法則や運動量保存の法則が成り立つ。しかし衝突と言うイベントが発生するかしないかについては、AとBそれぞれがどういう速度でどういうタイミングで運動しているかと言う時間的な関係性とどういう方向で運動しているのかと言う空間的な関係性が関わっている。それは量の問題ではなく、量の組み合わせの問題である。

量とパターンとは違うのである。(これは実はベイトソンの言葉だ。cf.『精神と自然』)
by ykenko1 | 2014-02-04 23:31 | 情報論 | Comments(0)

パターン特異的反応性(PSR; Pattern Specific Reaction)(1)

私は自然科学の分野においてパターン特異的反応性(PSR; pattern specific reaction)と言う概念を新しく立てるべきだと考えている。それはどういうことか、以下に説明してみる。

これまで物理の世界においては、運動や質量やエネルギーなどの客観的に定量化できるものごとの因果関係について取り扱ってきた。その第一の集大成がニュートン力学であり、第二の集大成がアインシュタインの相対性理論である。

一方で物質の組成がどのようになっているのかを追求してきたのが、化学であり、その第一の集大成は元素表である。その第二の集大成は物理と化学を合わせた形の量子力学である。

20世紀になり、物質とエネルギーのマクロの世界の究極理論が相対性理論であり、ミクロの世界の究極理論が量子力学と言うことで、未だに相対性理論と量子力学を結びつける大統一理論は完成していないとは言え、一応物質とエネルギーの世界の因果の全てを説明する理論が整ったように思われたのだ。(ある人はこれで科学的探求はほとんど究極まで行き着いたと言う意味で『科学の終焉』と言った。)

しかし、そのような世界観からはみ出す領域について同じ20世紀に広く知られるようになった。カオスや複雑系と言った非線形力学の領域である。

それらの領域の特徴は、多数の要素からなるシステムの複雑な相互作用から生じるパターンへの注目である。それはエネルギーのような量への注目でもなく、構成する物質が何であるかと言う個物への注目でもない。物質やエネルギーが時間的空間的にどのように組み合わされているのかと言う関係性への注目である。

(しかし自然科学の世界で最初にパターンについて注目し、定式化したのは19世紀の熱力学の分野のエントロピーの概念である。)
by ykenko1 | 2014-02-04 23:30 | 情報論 | Comments(0)

『通信の数学的理論』シャノン、ウィーバー

※書評と言うか自分自身のための読書メモのようなもの。どこかの誰かの参考になれば幸いなり。


『通信の数学的理論』クロード・E・シャノン、ワレン・ウィーバー
(ちくま学芸文庫)

情報の話になれば、必ず出てくるのがシャノンのこの論文である。シャノンの論文とウィーバーによる解説と言う2つの論文になっている。

シャノンの情報理論は工学的観点からメッセージを送ること、つまり通信のこと、を考えたもの。

ワレン・ウィーバーの整理(通信の3つのレベル);
レベルA(技術的な問題)通信において記号をどのくらい正確に伝えることができるのか。
レベルB(意味的な問題)送信された記号はどのくらい正確に所望の意図を伝えることができるのか。
レベルC(効果の問題)受信された意図はどのくらい効果的に所望する行為に影響するのか。

シャノンの理論はレベルAの問題を扱っている。(そして意味の問題は無視している。)

彼が問題としているのは、どのようなメッセージを送るかではなく、どのようなメッセージを送り得るのかと言う可能性の問題であり、個々のメッセージではなく、全体の状況の問題である。

例えば英語ではAと言う記号が出現する確率は○○、その次にBという記号が出現する確率は○○、と記号列が次々に出現する確率がおおよそ定められる。(数学的にはマルコフ過程という確率過程のモデルが用いられる。)

記号が出現する確率とは選択の自由度(不確かさ)でもある。それを2を底とした対数で表現し、それらを足し合わせたものをシャノンはエントロピーと呼んだ。統計力学のエントロピーと同様の形式を持っているからである。

統計力学におけるエントロピーとシャノン情報におけるエントロピーの相似性の理由;
ある分子の周囲の分子が存在する確率(選択の自由度)と記号列の次の記号の存在の確率(選択の自由度)が似ているから。


エントロピーの高い状態(秩序のない状態)の方が情報量が多いとしたが、これはその状態を表現するのに手間がかかると言うこと。(チャンネルの容量や通信速度など)

シャノンの情報理論と言うより通信理論と言った方が良いのではないか。情報量と言うより通信量とか通信関連容量などと言った方が良いのではないか。
by ykenko1 | 2013-08-16 21:33 | 情報論 | Comments(0)

『情報と宇宙(仮)』論文執筆のこと

私の本職とは全く関係ないのだが、現在『情報と宇宙(仮)』と言う論文を執筆している。宇宙の中における情報概念の位置付けと言った内容である。

ブログでは直接その論文の内容は書けないけれども、読んだ本の書評や論文周辺のこと、日々のことなどを書いていきたい。

出版することも考えているのだけれど、うまく行くかどうか全く分からない。

そんな感じです。
by ykenko1 | 2013-08-08 22:03 | 情報論 | Comments(0)

『量子が変える情報の宇宙』メモ

『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー(日経BP社)

何故これまで物理学の用語の中に情報が入らなかったのか?
情報-主観性を含む。主観性と客観性の中間領域。
「情報が物質と精神のつながりをもたらす」(ファインマン)

情報=関係(パターン)の伝達
BIT(0または1)からQUBIT(0と1の絡み合わせの状態)へ。
情報と確率の関係。ベイズ確率。
コペンハーゲン解釈;物理学は実在についての学問ではなく、情報についての学問。
ザイリンガーの原理;一つの基本系は1ビットの情報を伝える。
「(ITはBITからなる)このタイトルによって象徴される考え方とは、物理世界の全ての特徴が、その根底、大半の場合は最も深い根底に、非物質的な源と意味を宿しており、我々が現実と呼んでいるものは、イエスかノーかで答える質問と装置が起こす反応の記録を基にした、最終的な分析から生じてくるものである、というものだ。」(ウィーラー)
 「簡単に言えば、全ての物理現象は、元をたどれば情報理論的な存在であり、それは『参加型宇宙』に存在しているのである。」(ウィーラー)
実在の根底に情報(経験)がある。すべての科学的な事実は経験に基づいたものである。
「ITすなわち物質世界はその全体あるいは一部分がBITすなわち情報から作られている」「いつか我々は物理学全体を情報という言葉で理解し表現できるようになるだろう」「(参加型の宇宙)宇宙は完全にあちら側に存在していて発見されるのを待っているのではなく、我々が問いかける疑問やそれに答えることで得た情報そのもののよって、宇宙の一部が形作られる」(ウィーラー)

情報の意味論的側面;情報容(information content; CONT),総情報量(ザイリンガー、ブルクナー;量子論的なCONT)。驚きや信憑性(コーリ)と関連。

ベイズ理論、ランダム性についておまけで勉強になった。
by ykenko1 | 2006-08-14 17:28 | 情報論 | Comments(6)