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MCIのSPECT・PET

MCI(軽度認知機能障害)のSPECT(脳血流)・PET(脳の代謝)のいくつかの研究を見ると、まず最初期には海馬・内嗅皮質・後部帯状回と言った脳の内側面(辺縁系)の血流・代謝が障害され、更に進行すると側頭頭頂連合野等の脳の外側面(皮質)が障害されてくる。
by ykenko1 | 2006-08-29 08:46 | 認知症関連 | Comments(2)

『白い巨塔』のその後

3年前ぐらいにテレビドラマで山崎豊子原作の『白い巨塔』というのがやっていた。唐沢寿明とか江口洋介が出演していてかなり高視聴率だった。内容は国立大学医学部の教授選をめぐって権謀術数が繰り広げられるというもので、かなりリアルな所もあって私の周りの医者(知り合いの教授も)毎週かかさず見ていて「あんなことは実際にはないよなー。」とか「あれは本当にあるよね。」とかよく話題にのぼっていた。

元々の山崎豊子の原作は30年ぐらい前のもので、その頃もテレビドラマ化されているのだけれど、その時代は確かに大学病院の医学部の教授は何でもやり放題だったようだ。世の中も今より厳しくなかったためでもある。何故、大学病院の医学部の教授にそれほどの力があるかというと医局のドクターの人事権を握っているためである(薬の治験がらみというのもあるけれど)。大学から医者を派遣してもらいたい地方の病院が教授のところにすり寄ってきて、そこにお金がからむという構図があった。

しかし、時代は変わった。世の中が厳しくなって製薬会社が医者を接待したり、地方の病院からの賄賂のような形も難しくなってきた。更に大きな打撃は去年から始まった新しい医師の研修制度である。これまでは医学部の学生は卒業すると大学病院で研修を受ける者がほとんどで、それらの者達は皆、大学のどこかの医局に所属していた。外の病院に行くときも基本的には医局に所属しつつそこから派遣されるという形が多かった。ところが今回の制度の改定により卒業後は外の病院で研修する者が大部分になり、大学の医局に残る者は激減した。そのため教授の人事権と言っても肝心の動かすドクターそのものがいなくなってしまったのだ。

特に公立の医学部の場合、教授の給料は通常の勤務医よりも少ない場合もある。名誉職に近い。一昨年前から国立大学は独立法人化して国からの補助がもらえなくなった。そして良い研究実績を上げなければ研究費もどんどんカットされる。ますます教授の心労は絶えない状況となっている。

そんなこんなでここ何年かの間に状況が激変しているのである。『白い巨塔』の世界ははるか遠い昔のおとぎ話の世界になってしまった。

ですから、皆さん、大学病院の教授先生方を暖かい目で見守ってあげてください。
by ykenko1 | 2006-08-24 09:31 | その他 | Comments(3)

日本でのMCIに関するプロスペクティブ研究

今更ながらですがFIREBIRDさんの記事 The ADNIに関連して日本でのMCIに関する現在進行中の研究2つ。

1.J-COSMIC (Japan Cooperative SPECT Study on Assessment of Mild Impairment of Cognitive Function);MCIを対象にした神経心理検査と脳血流SPECTの早期診断に関する研究。3年間のフォローアップ。全国30施設が参加。目標500例。

2.SEAD-Japan (Study on Diagnosis of early Alzheimer's disease-Japan);MCIを対象にした神経心理検査、PET、MRI、を用いた早期診断に関する研究。3年間のフォローアップ。全国で6〜10施設。目標150例。

よい結果が出ればよいのですが、早期診断にSPECT・PETと言った高額な検査が必要とされるとすればコスト面も気になりますね。ただ現在の所どこでもできる検査ではないですが。
by ykenko1 | 2006-08-22 10:03 | 認知症関連 | Comments(2)

アリセプトの作用

現在の所、日本で使える唯一の抗痴呆薬はアリセプト(塩酸ドネペジル)で、認知機能障害を6ヶ月から1年、進行を遅らせることができると言われている。メインは認知機能障害に対する作用だが、周辺症状(BPSD)にも効くことがある。物の収集行為などが改善したり、興奮することが少なくなったりすることもある。逆にアリセプトで興奮しやすくなって、中止せざるを得ない場合もある。
by ykenko1 | 2006-08-18 08:50 | 認知症関連 | Comments(4)

痴呆症の重症度とケア

痴呆症の方のケアをするに当たって、その重症度に対する配慮が必要になる。例えばデイサービス等で麻痺はあるけれども、認知機能は保たれている高齢者の中に、痴呆症の方がいると「あの人はいつも同じ話を繰り返している」と言って、仲間はずれにされたり、いじめられたりするようなことがある。これが同じ痴呆症のグループの中でも重度の人が軽度の方々の中で馬鹿にされるというような状況も出てくる。同じ重症度の方々同士はうまくいく。まったく会話になっていないようなちぐはぐな会話でも、同じ話の繰り返しでも、うなずいたり、返事をしたりして延々と不思議なコミュニケーションが成立することがある。
by ykenko1 | 2006-08-16 13:10 | 認知症関連 | Comments(5)

『量子が変える情報の宇宙』メモ

『量子が変える情報の宇宙』ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー(日経BP社)

何故これまで物理学の用語の中に情報が入らなかったのか?
情報-主観性を含む。主観性と客観性の中間領域。
「情報が物質と精神のつながりをもたらす」(ファインマン)

情報=関係(パターン)の伝達
BIT(0または1)からQUBIT(0と1の絡み合わせの状態)へ。
情報と確率の関係。ベイズ確率。
コペンハーゲン解釈;物理学は実在についての学問ではなく、情報についての学問。
ザイリンガーの原理;一つの基本系は1ビットの情報を伝える。
「(ITはBITからなる)このタイトルによって象徴される考え方とは、物理世界の全ての特徴が、その根底、大半の場合は最も深い根底に、非物質的な源と意味を宿しており、我々が現実と呼んでいるものは、イエスかノーかで答える質問と装置が起こす反応の記録を基にした、最終的な分析から生じてくるものである、というものだ。」(ウィーラー)
 「簡単に言えば、全ての物理現象は、元をたどれば情報理論的な存在であり、それは『参加型宇宙』に存在しているのである。」(ウィーラー)
実在の根底に情報(経験)がある。すべての科学的な事実は経験に基づいたものである。
「ITすなわち物質世界はその全体あるいは一部分がBITすなわち情報から作られている」「いつか我々は物理学全体を情報という言葉で理解し表現できるようになるだろう」「(参加型の宇宙)宇宙は完全にあちら側に存在していて発見されるのを待っているのではなく、我々が問いかける疑問やそれに答えることで得た情報そのもののよって、宇宙の一部が形作られる」(ウィーラー)

情報の意味論的側面;情報容(information content; CONT),総情報量(ザイリンガー、ブルクナー;量子論的なCONT)。驚きや信憑性(コーリ)と関連。

ベイズ理論、ランダム性についておまけで勉強になった。
by ykenko1 | 2006-08-14 17:28 | 情報論 | Comments(6)

高次機能障害の認知リハビリテーション4

『高次脳機能研究』2006.6月号
“Recent Developments in Neuropsychological Rehabilitation”
Barbara A. Wilson (MRC Congnition and Brain Sciences Unit)
高次機能障害の認知リハビリについて。

1.現在ではリハビリテーションは脳損傷患者・家族とヘルスサービススタッフとの共同作業として考えられている。
2.リハビリテーションプログラムを作成する上の主要な方法のひとつがゴールプランニングであり、その方法論は確立しつつある。
3.認知・感情・心理的欠損は相互に関連しており、神経心理学的なトレーニングプログラムの中で全てが正しく位置付けられなければならない。
4.脳損傷を理解し、脳損傷を持つ人々がその課題を乗り越えるられるようにするためにテクノロジーが大きな役割を持っている。
5.リハビリテーションは集中治療室での治療の一環として組み込まれるようになりつつあり、それは慢性期の患者のためだけのものではない。
6.神経心理学的リハビリテーションは数多くの分野の枠組みやモデル、方法論を組み込んだ幅広い理論的基盤を持った分野であるという信念が広がってきている。
by ykenko1 | 2006-08-11 08:57 | 認知症関連 | Comments(0)

痴呆患者の認知リハビリテーション3

『痴呆性老人のための機能改善のための援助』
Myers Research Institute著、綿森淑子監訳(三輪書店)より

この中ではモンテッソーリ法と間隔伸長法を用いている。モンテッソーリ法は元々は子供に認知・社会・実用的能力を付けさせる目的で開発されたもの。

モンテッソーリ・アクティビティーの原則は;
  1.複雑な課題を単純→複雑へと進む系統的なステップに分割する
  2.うまくやり遂げることができるように手がかりを多く与えながら指導をする
  3.自分が正しい方向で課題に取り組んでいるか、また課題のやり方は適切か、について折に触れてフィードバックし、失敗することから生じる欲求不満を減らす。
  4.実生活で用いる物品を中心に、認知能力と感覚を刺激する多様な材料を用いる。
  5.活動を自分で選ばせる。

痴呆患者の学習を促進する原則(Mahendra,2001);
  1.情報や行動を再生する機会を繰り返し与える
  2.患者を積極的に学習に参加させる
  3.できるかぎり誤りを生じさせないように学習方法を配慮する
  4.複数の課題ではなく、1つの課題に集中させる
  5.手がかりを与えることによって情報や行動を再生しやすくする
by ykenko1 | 2006-08-10 10:16 | 認知症関連 | Comments(0)

アルツハイマー病の認知リハビリテーション2

先日の記事の続き。丸山哲弘氏の論文から。アルツハイマー病の特に記憶に関する認知リハについて。

1.二重の認知的支持を利用した残存機能の強化。
  (※二重の認知的支持というのは、記銘時と再生時における支持のこと)
   ・複数の感覚モダリティの利用
   ・感情的負荷
   ・意味記憶による強化

2.保存された潜在記憶を利用した領域特異的知識の教示
   ・間隔伸長訓練
   ・手がかり消去法
   ・誤りなし学習
   ・感覚運動スキル刺激(手続き記憶)←最も有望

3.補助具を利用した記憶障害対処法
   ・非電子的外部記憶装置
   ・電子的記憶装置
by ykenko1 | 2006-08-10 09:04 | 認知症関連 | Comments(0)

痴呆症のコミュニケーション論

痴呆症の方の日常生活上での問題のひとつがコミュニケーションがうまく取れないと言うことだ。しかし粘り強く付き合っている内に、相手の訴えようとしていること、欲していることが分かってくることがある。(単なる言語の障害ではなく)コミュニケーションの障害のされ方は痴呆症の原因疾患によって異なり、いかにしてコミュニケーションを取れるようになるか、今後の研究課題だと思う。
by ykenko1 | 2006-08-07 11:58 | 認知症関連 | Comments(0)