人は…

社会生物学者エドワード・ウィルソンの言葉
「人は知ろうとするより信じようとする動物である」
# by ykenko1 | 2007-05-19 15:20 | 人生、哲学 | Comments(0)

『サンシャイン2057』(ネタばれなし)

今日は研究日で時間が少し自由に使える。

ところで昨日、映画『サンシャイン2057』を見て来た。あまり宣伝もされていないし、宣伝内容もただのSF映画としてしか伝えていないのだが、これが実は結構深い哲学性をもった秀作だった。

ストーリーは太陽が冷却してきてその活動を再び蘇らせるため核爆弾を打ち込む話。『アルマゲドン』と『2001年宇宙の旅』と『イベントホライズン』(ホラーSFです)を足して3で割った感じと言えば、分かる人にはその雰囲気が伝わるかもしれない。とにかくハードSFの映画をイメージしてもらえばよい。映画の進行中に観客は常に太陽に向かって落ちて行く感覚に襲われる。

ただその表面的なストーリーの進行を縦糸とすれば、明らかにもうひとつの横糸が描かれている。その横糸が見終わってもすぐには理解できずに消化不良の感覚が残った。しかし半日考えてみてようやく作者の言わんとするところが理解できた。それを一言で言うと「光と死」である。8人のクルーは常に命がけのミッションを果たすために努力するのだが、一方で太陽(光)と死に魅せられていく。常識的には太陽は常に光と希望の象徴であるが、その太陽に近づきすぎるとそれは全てを燃やし尽くす死の象徴にもなる。そのメタファーこそがこの映画の主題なのである。それは人間のもつ生への欲望と死への欲望(フロイト流に言えばエロスとタナトス)という二つの矛盾対立する傾向性の表現でもある。それに気付かないとこの映画を本当の意味では理解できないだろう。

監督は『トレイン・スポッティング』『ザ・ビーチ』を作ったダニー・ボイル。なかなかあなどれない。

※ちなみに真田広之がクルーのキャプテンとして出演していていい味を出しています。
# by ykenko1 | 2007-05-01 12:28 | エンターテイメント | Comments(0)

マリオ・ブンゲ『精神の本性について』

マリオ・ブンゲ『精神の本性について』_a0010614_21353075.jpgマリオ・ブンゲ『精神の本性について』(産業図書)は1982年の出版と少し古い本だが、心身問題(心脳問題)を哲学的に整理するには大変参考になる。歴史的な心身問題に関する考え方を10に分類しているが、ブンゲ自身は創発的唯物論の立場を取っている。原題は“The Mind-Body Problem; A Psychobiological Approach”となっていて、原題の方が本書の内容を的確に表現していると思う。
# by ykenko1 | 2007-04-16 21:40 | 心の哲学 | Comments(0)

暗い曲

かなり昔のものなのだけれども、良く聞いていた暗いアルバム2枚。

暗い曲_a0010614_1831727.jpgひとつはthis heatというグループのthis heatというアルバム。真っ暗な熱帯雨林の森の中をさまよっているような気分になる。先日たまたまCD店に行って驚いたのは昨年this heatのbox albumが発売されていたのを知った事。もう20年ほど前に3-4年活動してすぐ解散したグループでアルバムも2-3枚程度しか出していないのに、今頃、復刻版が出るとは。しかも値段は2万円以上する。いつの間にか伝説のバンドになっていたらしい。




暗い曲_a0010614_1834419.jpgもうひとつはPublic Image LtdのThe flowers of romanceというアルバム。先程のthis heatの曲はエネルギーが内に向かう内省的なものだったのに比較して、こちらは破壊的なエネルギーが外に向かう。たたきつけるようなドラムのリズムが印象的。歌詞の内容は冒涜的で反宗教的なのだが、何故か宗教的な雰囲気が漂う反宗教の宗教音楽。





暗ーい気分に浸りたい方にお勧め。…でも、古いなー。
# by ykenko1 | 2007-04-16 18:20 | エンターテイメント | Comments(2)

決定論と非決定論

以下は私の知人の説。

通常のレベルの世界における物理学は決定論で、実際に何が起こるかは自然法則によって決まっている。しかし量子力学の世界では自然法則が決めるのはある出来事が起こる確率のみであって、実際に何が起きるかは決まらない。実際に何が起きるのか決めるのは素粒子自身の自律的な選択なのだと言う。

確かに量子力学の世界で最も支配的な法則はシュレディンガーの波動方程式だが、それ自体は物事の起こりやすさの確率の重ね合わせを表現しているに過ぎない。実際に何かが起こる時にその中のひとつが選択されることを波動関数の収縮というが、何故その収縮が起きるのかについて定説はない。
# by ykenko1 | 2007-04-06 06:13 | 物理学 | Comments(0)