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執念が道を切り拓く

外来でフォローしていた認知症の患者さんがいた。これ以上、治療的には難しい状態であったので何ヶ月か何もせず経過観察の状態であった。ところが数ヶ月して息子さんが外来にやってきて「もう本当にこれ以上、どうにもならないのでしょうか?」とお話して来られた。「うーん、そうですねー。」と唸りつつ、「それでは別のお薬を出してみましょう。」ということにした。そうしたところ、その薬によって劇的に症状が改善したという。自分で薬を出しておいて驚いた。息子さんの執念が患者さんの生きる道を切り拓いた。愛の執念、恐るべし。
by ykenko1 | 2007-03-08 19:21 | 認知症関連 | Comments(0)

アットホームが良いとは限らない

前頭側頭型痴呆の患者さんで普段は暴言の多い方なのだが、回想法のグループワークの時にはきちんとした話し方をしたり、皆に配慮してユーモラスな話をしたりする。この患者さんにとってはグループワークの時のやや非日常の雰囲気によって、少しいつもと違うスイッチが入るらしい。考えてみれば普通人の生活というものは仕事や家の外での生活と家での生活の二通りを使い分けながら生活しているのが当たり前な訳で、つまりはオンとオフを使い分けながら生活しているパターンが長く続く。痴呆症になったからと言っていつもアットホームのリラックスした雰囲気が良いとは限らない。むしろ少し非日常の環境に身を置く時間を作ってあげることが、本人らしさを取り戻す契機にもなる。
by ykenko1 | 2007-03-02 18:51 | 認知症関連 | Comments(2)

『明日の記憶』

以前から見よう、見ようと思っていて見れなかったのだが、ようやく映画『明日の記憶』をDVDで見た。感じさせられる事、考えさせられる事、が多く勉強になった。

若年性アルツハイマー病の主人公とその家族の物語なのだが、若年性であるが故に突き付けられる様々な問題について知る事となった。私は老年期発症型の患者さんしか接した事がないので分からなかったことも多い。

改めて思ったことは、この病気が患者とその家族に与える試練とは「時間との戦い」なのだということ。一昔前に癌が不治の病だった頃、癌の与える試練もある意味で「時間との戦い」だった。癌の場合は短く区切られ、早回しされる「時間」が課題となる。一方、アルツハイマー病の場合は引き延ばされ、しかも(成長とは反対の意味で)逆行していく「時間」が提示される。その「時間」をいかに前向きに生きていく事ができるのか。その重みは当事者でなければ理解できないものであろう。

現在、様々な新薬の開発も進められている。本邦での状況もここ数年で大きく変わってくるであろう。少なくともそのように祈りたい。
by ykenko1 | 2007-03-01 00:36 | 認知症関連 | Comments(0)

アリセプトと不定愁訴

「お腹が痛い」などの不定愁訴が強い患者さんで何度も医師や看護師のところにやってくる方がいた。記憶障害も比較的軽度で画像上でも海馬や海馬傍回の萎縮も軽度で、アルツハイマー病というよりも老年期抑うつ状態と考えていたが、試しにアリセプトを投与したところ、不定愁訴がぴったり止まり、ご本人の自覚としても「前より落ち着いているようです」とのこと。アルツハイマー病だったのだと改めて納得。
by ykenko1 | 2007-02-08 20:12 | 認知症関連 | Comments(0)

自分の職場でsynchronous oscillationに関する研究ができるかもしれない。

自分の職場でsynchronous oscillationに関する痴呆症患者を対象にした臨床研究ができるかもしれない状況になってきた。うまくいけばとても面白いし、直接的に患者さんの役に立つことになりそうだ。
by ykenko1 | 2007-02-03 23:29 | 脳科学 | Comments(2)

ADにおける社会的ネットワークと認知機能

“The effect of social networks on the relation between Alzheimer's disease pathology and level of cognitive function in old people: a longitudinal cohort study”
Bennett, DA., Schneider, JA., et al
Lancet Neurol 2006;5:406-412

縦断的なコホート研究で89人の痴呆を伴わない高齢者を死亡までフォローアップし、その脳の病理変化と生前の認知機能と社会的ネットワークの程度との関係を調べた。結論としては社会的ネットワークが豊富であるほど、同じアルツハイマー病性の病理変化があっても認知機能は保たれていた。特に意味記憶とワーキングメモリにその効果が強く認められた。辺縁系・連合野・皮質下核を含む社会的認知に関与するような領域の活用が病理変化に対する代償機能をもたらすのではないかと考察している。

しっかりした研究デザイン。これが本当だとすれば大変面白い。
by ykenko1 | 2007-01-26 00:32 | 認知症関連 | Comments(0)

新年明けまして

新年明けましておめでとうございます。

ようやく私の病院でもノロウィルスも下火になってきた。まずは一安心。現在、アルツハイマー病に関する頼まれ原稿を作成中。なかなかまとまらず、難航中。昨年末に修正していた論文がようやくアクセプトされた。めでたしめでたし。

本年も書いたり書かなかったりすると思いますが、よろしくお願いします。
by ykenko1 | 2007-01-07 00:53 | 認知症関連 | Comments(2)

痴呆症のある高齢者の骨折(2)

痴呆症のある高齢者の骨折について、その第二段。私の病棟では転倒のリスクに関してチェックリストを作り、そのポイントの高い順番から入院患者のリストにして、一週間ごとにスタッフで情報を共有して認識を新たにすることにした。それでも100%防げる訳ではないし、チェックリストではポイントの低い方が転倒しない訳ではないと思う。ただハイリスクの方についてのスタッフの意識を優先順位を付けて明確化して取り組む事でもう少し取り組み方が改善することを期待している。(あとはriskyな患者さんに対するスタッフのアンテナを磨いていくことが必要か?)
by ykenko1 | 2006-11-30 06:39 | 認知症関連 | Comments(2)

血管性リスクファクターとアルツハイマー病の進行の関係

NEUROLOGY 2006;67:1357-1362
“Relationship of vascular risk to the progression of Alzheimer disease”

ここ10年ぐらいの間、アルツハイマー病のメカニズムと血管性病変のメカニズムの相互作用の問題が話題になっている。いくつかの研究でこれまで血管性病変のリスクファクターと考えられていたもの(高血圧や糖尿病)がアルツハイマー病の発症を促進する可能性が示唆されたためだ。この論文もその文脈の中での研究だ。

224名のアルツハイマー病患者で血管性のリスクファクターがある者とない者を18ヶ月フォローアップ。結果としてはリスクファクターがある者とない者でアルツハイマー病の進行に有意差はなかった。ただしこの18ヶ月の間に脳血管障害のイベント(脳卒中など)があった者は有意に認知機能障害の悪化を認めた。年齢・性・教育歴・痴呆の重症度・抑うつ・コリンエステラーゼ阻害剤の服用の有無などを共変量として投入しても結果は変わらなかった。

血管性のリスクファクターはアルツハイマー病の症状の最初の表現のされ方に影響を及ぼすが、アルツハイマー病そのものの病変の進行には関与していないのではないか、と考察。
by ykenko1 | 2006-10-28 23:02 | 認知症関連 | Comments(2)

痴呆症のある高齢者の骨折

それでなくても高齢者の方はバランスが悪く、骨ももろく、転倒して骨折することが多い。それに輪を掛けて、痴呆症のある高齢者は判断力が鈍っているために骨折しやすい。夜中にベッドから落ちたりする事もしばしば。現場としては大変困った問題である。本当に骨折を防ごうと思えば、薬剤を使用するか、抑制をするか、等により行動を制限しQOLを低下させ、そのことがやがてはADLの低下に結びつく。行動制限をゆるめれば骨折する(極端な言い方だが)。その微妙なバランスを取りながら医療・看護・ケアスタッフが関わって行く事になる。あとは過去に転倒の既往がある方はよく注意して見ていくようにする等個々の患者さんの個別的な状況を踏まえながらやっていくしかない。
by ykenko1 | 2006-10-26 12:16 | 認知症関連 | Comments(3)