サンタフェ研究所のブライアン・アーサーは複雑系経済学の教授であるが、過去のような大量生産時代の経済法則と現代のようなハイテク時代の経済法則ではまったく異なるものになる、という。
大量生産の時代とは同じような製品を大量に生産して販売するような形態の経済システムの時代のことを指す(例えば車・テレビ・冷蔵庫など)。そのようなシステムでの法則として、収益逓減の法則(徐々に利益が減っていく)、商品の固定化、人々は最適化を目指して努力する、完全合理性に基づいて働く、などを挙げている。 一方、製薬・IT関連・航空機・軍事兵器などのハイテク時代にあっては、収益逓増(徐々に利益が増えていき、ある企業が一人勝ちの状態になる)、商品は流動化し絶え間なく変化する、人々は最適化よりも次に来る波を読んで適応しようとする、限定合理性(限られた範囲内での合理性に基づいて行動する、変化が激しく予測不可能な状況下での判断となるので)、などの法則が成り立つという。 マイクロソフトのビル・ゲイツやインテルのアンディ・グローブはハイテク時代にあって先を読む能力に長けており、その結果、市場で勝ち続けている。このような時代に相応しい組織形態はヒエラルキーに基づいた固い組織ではなく、使命遂行型のフラットで柔軟な組織形態が望ましい。 アーサーはこのような経済学を考えるようになったのは、生物の世界においてほんの小さな歴史的偶然が拡大され、活用され、強化されるシステムがあることを知ったからだという。このようなシステムはポジティブ・フィードバックのシステムである。これまでの新古典派の経済学ではネガティブ・フィードバックの考えに基づいており、システムに何かの変化がおきるとやがてそれを打ち消すような力が働いて再びもとの均衡を取り戻すシステムを想定していた。しかし彼は現実の経済は収益逓増というポジティブ・フィードバックが強く作用する生物学的なシステムではないか、と考えたのだ。 参考書;週刊ダイヤモンド1996/11/2特大号『「複雑系」の衝撃』から
by ykenko1
| 2004-09-15 00:36
| 社会科学
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