ダニエル・デネット;『解明される意識』

ダニエル・デネット;『解明される意識』_a0010614_15383810.jpgなぜデネットは好きになれないのだろうか?まあ、好きとか嫌いで判断してはあれなんだけれど。基本的には心脳問題に対する彼のスタンスが好きになれない。彼のロジックはこうだ、「世の中には物質しかない→意識現象は幻覚→適当に既存の理論を組み合わせて心脳問題は解決→おしまい!」。本書のタイトルからして『解明される意識 』 Consciousness explainedである。これで解明されているのか!私にはまったくそうは思えない。オリジナリティもあまり感じられない。つまりはあくまでも心脳問題をsimple problemとしていて、まともに扱っていないという印象。自分の頭で新しい道を切り開こうと言う姿勢がないと言うこと。

本書の中での一応、デネットのオリジナルのアイデアは以下の三つか?
 ・ヘテロ現象学
 ・多元的草稿説(パンデモニアムモデル)
 ・ミーム複合体によるヴァーチャルマシーン

どれもモデルとしての具体性に欠ける。ヘテロ現象学は主観的な意識の内容をセルフレポートをなるべく客観的に記録することで意識の現象学的な内容に迫るという方法論。しかし我々が感じている意識の内容で言葉で表現できるものがどれだけのものか?むしろ言葉にできない内容の方が多いではないか!多元的草稿説はミンスキーの「心の社会」と変わらない内容だし、ミーム複合体って何のことだ!?(ミームとはリチャード・ドーキンスが言うところの文化的遺伝子、文化的な行動の単位、のことで模倣を通して伝搬されるもの)何も具体性がない!ヴァーチャルマシーンって何?

なぜ繰り返し「カルテジアン劇場はない」と繰り返すのか。何回も同じことを聞かされる必要はない。説得力のあるひとつのモデルを提示してもらえばそれでこちらは十分納得する。それがないから納得できないのだ。哲学はプロパガンダか?

600ページ近くある本書で全く学ぶべきところがないと言ったら嘘で、ちょこちょこ面白い記述もあるけれど、中心的な内容については???だ。

にほんブログ村 科学ブログへ
by ykenko1 | 2007-12-15 21:20 | 心の哲学 | Comments(0)


<< Mac OS 10.5レパード 目的志向的行動 >>