がんばれ!日本人研究者(8);松本元パート1

   理化学研究所、脳科学総合研究センター、ブレインウェイ(脳道)グループディレクターの松本元(まつもとげん)氏の死を知ったのは最近のことだ。まだ60代。まだまだこれからの人物であったのに大変残念でならない。ご冥福を心からお祈り致します。
  松本氏は脳を「情報を処理するための自動アルゴリズム獲得システム」として位置づけていた。普通のコンピュータはアルゴリズム自体は人間が作成するものである。しかし脳は自らアルゴリズム自体を作り出し、それに基づいて戦略を立て、行動する。自然界にはもうひとつ「自動アルゴリズム獲得システム」がある、と言う。それは遺伝のシステムである。遺伝の場合のアルゴリズムはDNAの順序列として表現されるが、それは偶発的に生じた変異が環境との相互作用の中で適合性が試され、適合していると認められたものだけが生き残るという戦略である。
  氏は鳥のまねをして人間が飛行機を作る中で鳥の飛行の原理自体を理解していったのと同じように、脳型コンピュータを作る中で脳を理解しようとするアプローチを取っていた。彼はそのアプローチを「脳の構成的研究」とも呼んでいた。
  氏の著作には『愛は脳を活性化する』 というロマンチックな著作もあるが、もともとはヤリイカの単一巨大神経細胞で行われる情報処理や伝達の研究を行うために、不可能とされていたヤリイカの飼育を世界で一番はじめに成功させるところから研究を出発させている。とんでもない苦労から出発した。真に創造的で挑戦的な研究者であった。
  次回につづく。
by ykenko1 | 2004-08-02 01:34 | 日本人研究者 | Comments(4)
Commented by homeandhome at 2004-08-02 16:51
すごいですね、ヤリイカですか・・・。実験するためにそこまでやるというのは想像を絶しますね。ただ、それだけにお亡くなりになられたのは残念な気がします。
Commented by ykenko1 at 2004-08-02 17:12
そうなんですよ。かなり難しかったようなんですが、それに成功したときに海外の生物学者が何人も松本先生の研究所を訪れて見学していったとのことです。
Commented by aidiary at 2005-04-13 20:31 x
愛するコンピュータは以前聞き、大胆なこと言うなあと思ってました。もう亡くなられてたんですね。
Commented by ykenko1 at 2005-04-13 22:58
そうなんですよ。まだ60代だったのに、惜しい方を失くしたものです。脳を理解する為に脳を作る(脳型コンピュータを作る)と言う発想がすばらしいですね。


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